ゲーム理論は興味があるけど毎回入門書などを読んでわかった気になった後、入門とプロレベルの差に思いをはせて勉強しても無駄でしょうと思ったりする。まあでもまた入門書を読みだしたり。やはり興味があるようだ。いつもいつかは勉強しなおしたいって思っていてまたそのサイクルが来たようでこの本を手に取った。正直に本を手に取る前は入門の入門はさすがに要らんでしょと思ったがやはり専門家が膨大な知識量を元に入門書を書いてくれたことでものすごい勉強になった本だった。
まず1章部分でこの本を買った価値があったと思う。ゲーム理論が意思決定をよりクリアにする方法論だということは知ってはいたが1章で3つの意思決定問題があることを示してくれた。これにより自分が明らかにしたいもっと知りたいところがわかってゲーム理論をやっぱり勉強したいというモチベーションが上がった。
まずは一つ目としてカジノでルーレットのどのスロットにボールが入るか当てることを例に挙げている。確率を考えてどうベットしていくかは計算ができる。したがってここからは客観的予想ができるそれを元に戦略を立てる。さらにいうと前もって準備できることである。
次に競馬でどの馬が勝つかはある程度データはあるもののそのデータをそれらのデータをどのように組み合わせて、どのような文脈の中で使い、どの馬が勝つか予想することは主観的予想である。
最後はジャンケンなど、相手がいる状況である程度データもあるが、文脈もある中で、自分が相手の出方を予想して意思決定する。さらに相手も自分の出方を予想して意思決定する。この状況を戦略的状況といい、ゲーム理論ではこの戦略的状況をゲームという。このもっとも難しい意思決定問題『ゲーム』で何が起きるのかを予想するのがゲーム理論の役割である。
第二章はナッシュ均衡について書いてある。ゲーム理論の中でもっとも基本的な概念であるが、この概念の本質をしれば一見似通っていない様々な状況の本質がシンプルな一つのフレームワークで分析できることを著者は示す。これはゲーム理論の醍醐味だという。
その後、ナッシュ均衡についてかなりのページ数を使って説明している。ナッシュ均衡がいかに大事な概念で大事すぎてもう言及されないほどになっているというのだ。このナッシュ均衡の章の中で囚人のジレンマというよくゲーム理論で出てくる例を挙げる。よく出てくる問題なのだがまず一つ目の論点として私がこの本で特に学んだのは多岐にわたる社会経済問題を我々は囚人のジレンマというフレームワークでとらえて、様々な状況の本質をシンプルなフレームワークにとらえ直して考えることができるというのがゲーム理論の面白さだということだ。もう一つはジレンマというものがあるのが当然だがゲーム理論で学ぶ結局そんなに世の中簡単じゃないよねというところだ。正直、著者の妻の夕食の支度で著者が参加するかしないかをこのゲームフレームワークでとらえたときやはり世の中単純ではないよなと思ってしまう。
そして第3章と4章とナッシュ均衡を少しづつ複雑な問題にしていっているように読み取れた。3章ではナッシュ均衡が一つではない場合を議論しカップルのどこの携帯会社を選ぶか問題を考える。4章ではナッシュ均衡が存在しない場合を議論しジャンケンを始めに議論し、ジャンケンに勝つ方法がないということがきっちりと結果として証明できることを示す。その後、実際にサッカーのPK戦でもそういった必勝法がないことも示されている。またカリスマ候補者と平凡な候補者が王道政策、外道政策をどのように選ぶかについて解説している。
5章に入ると少し変わってきてこれまでのように同時に意思決定するのではなく時間を追ってゲームを進行する場合について考えている。ここでは先ほどのカップルの携帯会社選定の例を挙げた後、バークレーでラーメン店一風堂、博多天神(そしてじゃんがら)の進出ゲームを考える。ここで初めてゲームの木が出てくる。ここでゲームの木の書き方のルールを書いてあったのは本書で初めて見た気がする。今まで自分は適当に考えていたな。きちんと書かないと意思決定には役に立たないのだなと例をだして示してもらった感じだ。ここでは当然場合分けで解が出てくる。
このラーメン屋さんの出店競争の解説で学んだことは理論的には正しいと思われることを押さえておくことは大事だとということ。これは個人的にも実際に経験したことで、現実世界で相手が自分の利益を確保するならこう行動するだろうと考えたが実際にはそう行動しなかったことでびっくりしたことがある。きちんと状況を分析してからこそなぜこの人はそう行動しないんだろうと考えられた。相手が利潤を最大化しない、利潤最大化していることを知らないという状況は社会では常にあると思う。だからといって自分が知らずにいるというわけにはいかないなと思った。
第6章にきて不完全情報ゲームについてだ。この章では意思決定点のどこにいるかわかない状況で意思決定を集めてセットにしている情報セットが示される。だんだん難しくなってきた。ここではセンスのないお金持ち、画家と画家の弟子の意思決定の画家ゲームが例として示される。その後、宮崎あおいと岡田准一の結婚から話題を始めてデートゲームを解く。
本の内容は大体ここで終わり。なかなか簡単な内容にまとめられているがイントロからだんだんゲーム理論の要素を一つ一つ加えながら書き進められていてなるほど入門書の入門とはいえよく仕込まれているなと思った。最後は参考文献が書いてあってこれからもっと読み進めていきたい場合の参考になった。
最後のおわりにでは著者が本を書いたきっかけを書いてくださっていてこのモチベーションには心を打たれた。私の祖父は両方ともなくなっているがこういう風に思うのは私の指導教官に対してかもしれない。先生がまだいろいろとわかるうちに彼をうならせるような成果を残しておきたいと思った。本書は大変勉強になって内容は入門の入門書でもゲーム理論のポイントに触れた気がする。これからいろいろな本を読んでいくにしても本書で学んだポイントというものは生きていく気がする。