本のレビュー11 【未来経済都市 沖縄】安里昌利著

最近沖縄が恋しくなって沖縄の経済について興味あったので購入して一気に読んだ。

沖縄には人生で二回行ったことがある。一回目はもう15年以上にも前になるかもしれない。大学の卒業旅行だ。サークルの同期といったときで同期には計画から何から何まで任せきりで参加させてもらっていていまだに申し訳なく思っている。どこに行くか夜話し合ったり、自分の研究計画書を見られたり、卒業旅行中も研究のことを忘れられなかったり、いろいろなことを覚えている。スキューバダイビングではパニック障害になった思い出がある。。。楽しかった。また行きたいと思った。

二回目に行ったのは実は最近だ。もちろんコロナの前だった。琉球大の共同研究者とOISTの研究者を訪問しに行ったときだ。滞在期間は短かったがまた機会があったら行けるだろうと思っていたらコロナになってしまった。OISTも賛否両論あるだろうなと思ったが面白い研究所ができることは素直に良いなと思う。今のところ私のいる環境も悪くないので是非とも行きたいという感じではないが。また分野は狭いと思うのでOISTにせよAPUにせよ沖縄で言えば琉球大とか日本で言えば東大とか本格的に文理にわたり総合的な基礎研究ができる大きな機関と比べるのはいかがなものかと思う。

本書は出版はコロナ前の2018年11月に書かれたものである。著者は沖縄銀行の元頭取の方で沖縄県宜野座村出身生まれ。1973年に琉球大学を卒業されているみたいなので沖縄返還後の経済の発展とともにお仕事をされてきた方だと思う。おそらく2018年頃はイケイケの沖縄経済だったと記憶している。本書を読む前に『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』樋口耕太郎著を読んでいたので本書を読んだとき申し訳ないが少し良いところを書きすぎじゃないかと思った。沖縄には発展してほしい。そしてうまく行っているところはたくさんあるだろう。一方でこのポテンシャルでなぜこの程度なのかというところもありその点は樋口氏の本で学んだ。沖縄は日本の縮図みたいなところがあり、沖縄の問題は日本の問題であり沖縄が解決できるのなら日本にも参考になることがたくさんあるはずだ。

本書で特に気になったところをここに書き残していく。私は福岡出身で大学から東京、博士号取得後はアメリカ、そして今はオーストラリアに来たので正直沖縄の土地勘など全くない。逆に沖縄好き好きバイアスを全く取り除いてグーグルマップを見ると沖縄は北部が全く発展していないように見える。これにはいろいろと理由があるのだろう。そしてなぜ鉄道が走らないのかを考える。実際には鉄道はあってなくなったのだと。今はゆいレールがあるがたったの二両編成で距離も長くない。本書を見ると鉄道が復活するかもしれないと書いてあるが、軽くネット上で読んだところ、ゆいレールのこれ以上の拡張もたやすくはない。もし鉄道ができて南北に人の流れが活発になると沖縄はさらに発展するのだろうがそこはここ10年位のスパンでは大きなことも起きそうにもない。北部の発展に勢いがついてくるとまた違って景色がみえてくるのではないか?渋滞が多いことは残念だ。

あとは基地の返還については本書で学んだが返還地を使って再開発されれば沖縄発展していくだろう。いろいろとアイデアがあることは本書で学んだ。一方で少し調べてみるとこの返還もそんなに簡単に進んでいくものではないなと思った。一刻も早く基地が返還されて開発が始まると沖縄の発展も早まるはずだなと思った。

沖縄は人口が増えていて出生率も高い。日本の少子化にブレーキをかけるかもしれない。ここで沖縄の出生率を見てみると確かに第一位。もうひとつ気が付いたのは九州は全般的に高い。福岡が勢いがあるのもこれも原因があるんじゃないかと思った。結局視点が福岡出身か。

沖縄がアジアの中心で国際物流拠点や観光を足掛かりに地理的優位性を示しているが、ここでライバルとしてどうしても僕の出身地福岡が気になってくる。同じ論理を福岡も使っていた。今のところ福岡市長の方がビジョンを持っている気がする。物流と観光では沖縄は勝てるがビジネスでは福岡に分があるのではないか?九州としてとらえると観光でも沖縄と戦えそう。一方で沖縄がシンガポールなどを参考にして空港と港を重要視しているのは本書でなるほどと思った。島の発展は空港と港がボトルネック。しっかり投資をして世界最高水準のものができれば沖縄は重要なところになるだろう。コロナ禍でもしっかり投資をし続けてほしい。

後意外と内地から遠い。福岡からでも近くはないなって正直思った。実際に行くとわかる。福岡からちょっと飛行機で行こうかなって思ったがそんなに簡単じゃなかった。

OISTには期待しているが一方で本当にインパクトが残せる仕事ができていてそれが琉大の様に他分野にわたってできてくるかというとなかなか難しいのではないか?高いお金を出して優秀な人々だけを集めてもしっかり若い人を集めて実際に手を動かす大学生・院生そしてポスドクなどが活動しながら研究分野も広がったほうが良いし。そして高い補助金を入れ続けないで成果を出せるようなサステイナブルな組織になる必要はあるのではないか?僕の印象だと留学している院生とかもあまりに日本に残って研究していくような意見を持っている人は少なかった。たとえば海外の名門大学に行く準備をしている学生の話などはよく聞いた。そういう感じで2、3年沖縄にいたって良い研究できるかなって感じがした。

本書ではスタートアップも開業率が高いことを示している。女性起業家が多いことは大変すばらしい。一方で本当に質の高いスタートアップが生まれていって成長していっているかどうか?沖縄には地場の成長しない競争もしない外に行かない大企業が多かったのではないか?一方、これから日本でそして世界で戦えるスタートアップが出てくると変わるかもしれない。

沖縄はハワイよりも観光客が多くなったが一人当たりの消費金額が少ない。それは滞在期間によってしまうからだ。今はハワイが先にコロナから復活して沖縄は全くの劣勢になってしまった。とにかく沖縄は観光業から立ち直ってしっかり投資をしてなるべく地場の産業と経済を作っていかないとなかなか難しい。コロナ後どうなるか?コロナで若い人が逆に残り地元に人材が残るようなことになればいいが。

また沖縄は最低賃金が低すぎる。沖縄の経済発展に伴い、他県に先駆けて最低賃金をあげていって日本中からも労働者が殺到するような場所にしなければならないんじゃないか?と思う。でもそういうことはやりたくなさそう。。沖縄の経済が好調でも沖縄では人より高い給料をもらうことを避ける文化があるという。競争で人に勝ってはいけないと。そうすると余計に最低賃金をあげて皆を底上げしていく政策が効くはずなのだが。みんなの賃金上がっているから上げましょうみたいな。

あとそれ関連では調べてみると宮古島もポテンシャルという点ではおおきいのではないか?5万人程度で2015年から2020年で人口が増えたというが以外にもそれまではずっと減ってきていたことを知って驚いた。。

沖縄はポテンシャルしかない。本書を読むとそれがわかる。じゃあなぜ今までそれがポテンシャルのままなのか?これからも沖縄には注目してきたい。できることがあれば応援していくつもりだ。