准教授昇進を審査して学んだこと①

今回はある国のある大学の准教授の昇進について評価委員を仰せつかってそれについて英語で一万字ほどのレポートを書かせていただいた。つい先ほど所属機関のテンプレートで英語で定型の推薦書の形に文章を整え、自分のサインを入れて担当者にメールで送ったところ。ここでは今回学んだことをまとめておこうと思う。正直に思うことは准教授になるっていうことはそれほど甘くないなっていうこと。これに比べたら日本で准教授になるの超簡単じゃない?とも思えてくる(実際にはそうではない)。研究者として生きている国にもよると思うし分野によると思うし一概には言えないが。やはり名のある大学できちんと教授をしているということはすごいことなのだなと思った。

まずどのように選ばれたのかだが、これは私が候補者から依頼を受けて推薦書を執筆してほしいのと、私を評価委員のメンバーの候補に入れていいか?と聞かれたところに始まった。候補者は共著論文のない18名から推薦書を集める必要があり、この評価委員は大学によってえらばれた12人が書くレポートにより、候補者の昇進が妥当かどうか評価されるということのようだ。この時点ですでに大変そうだと思ったのが正直なところである。

その後大学によりその評価委員のメンバーに選ばれたため、評価をお願いできないかとメールが来た。その際、以下の点について主に評価をしてほしいと言われる。それを1カ月半ほどの猶予をもらえるのでレポートを書いてくれということだった。いやらしい話、それをやってくれれば170USD(2万円弱ほど)の報酬を頂けるということだった。

候補者の業績についてのレポートは以下を中心にまとめてほしいとのこと。原文は英語であるが日本語に直すと以下のような感じ。

  1. 評価者と候補者の関係についてご説明ください。
  2. 候補者の研究業績を分析しコメントいただきたい。候補者の研究水準が特に書いてきた論文の数や質において国際的な研究水準や基準値を満たしているか?どうかを中心に評価をお願いいたします。
  3. 候補者がこれまで行ってきた研究がその研究分野に対してどういうインパクトを与えてきたか?またこれからどういったインパクトを与えていくことが期待されるかについてご意見をお願いいたします。
  4. 同じキャリアステージにいる同じ分野の研究者と比較して候補者の研究業績をどのように評価しますか?
  5. 候補者の研究業績であれば、貴方の所属機関ではどれくらい可能性で昇進が認められるのでしょうか?

以下の5つの資料が参考にするものとして準備されていた。

  1. 大学が準備したと思われる候補者の履歴書
  2. 候補者自身が準備した研究歴
  3. 候補者の研究業績の客観的データ
  4. 候補者の代表的な論文五篇
  5. 教育構成自己資料

1は候補者が入力したものだと思われるが、大学のフォーマットで彼の履歴書がまとめられていた。この1と2はほとんど同じ内容。。2は候補者が自らまとめたもののようで非常に読みやすい。最初は一生懸命1を読んでいたが途中からよくまとめられている2を参考にした。最初からそうしていればよかった。

これら2つの資料には大学入学から現在のキャリアまで詳細に書かれており、彼の受賞歴も細かいところまで書かれていた。この資料に書かれているのは彼の学歴、研究資金獲得歴、論文、受賞歴、大学の授業歴、指導した博士課程学生、代表的な研究業績のまとめなどが記入されていた。

3つ目の資料では論文に関してもう少し客観的なデータ。例えば第一著者でどれくらい書いてあるか?責任著者でどれくらい書いてあるか?論文の総数とかその論文の引用数。また Web of ScienceやGoogle Schalorなども参照して過去10年間くらいの論文数及び引用数がどうなっているか。候補者のプロファイルのリンクまで張ってあってすべてチェックできるようになっていた。

また4は単純に代表的な論文を五つ選ばれていた。最後の5は大学のシラバスも含む候補者の授業で使われてきた資料やコース内容などがまとめられた資料があった。

大体これらをすべて読んてくると彼の貢献度というものがわかってきた。これらを評価して大体一カ月半程度で評価レポートを書いてくれとのこと。英語一万字くらいでまとめ書いた後は所属機関フォーマットのテンプレートで文書を綺麗に見れるように直し、英語の推薦書の定型に形を整えて、自分のサインを入れて提出しました。締め切りの二週間以上前には終えて先ほど提出したところだ。

少し長くなってきたので今日はここら辺で終えて実際にどれくらいの基準で彼は審査を受けていてどのような業績を挙げていたかまとめていきたいと思う。もちろん研究内容や個人がわかるようなことには踏み込みまないつもりだ。ただ、これらをまとめることにより国際社会では准教授という職がなるのがどれくらい難しいものかを知ることになった。私自身は自分もどのような方向でどのレベルで自分の研究を進めていこうかという具体的な指針となったので次回は具体的な論文数やグラント獲得額、育てた学生数なども具体的に書きながらまとめてと思う。