書いてわかった推薦書を書くことで得られる意外なこと

最近推薦書の執筆を頼まれることが増えてきた。僕のキャリアステージも少し変わってきたようだ。年始に准教授昇進の推薦書を書いたことについてはここに記事

https://www.shinichiroyano.com/2022/01/12/准教授昇進を審査して学んだこと/

https://www.shinichiroyano.com/2022/01/15/准教授昇進を審査して学んだこと/

を書いたがそれに続いて今回はポスドクの推薦書を書いた。推薦書をいくつか書きながら新たに学んだことがあったのでここに書いておこうと思う。

彼の業績リストを拝見していくつか論文を読みながら疑問に思ったことは彼に質問して自分の経験と関係と理解を合わせてできるだけの推薦書は書かせていただいた。現在はまだPhDの学生だが彼の業績は十分だと思う。確かファーストオーサーで4本くらい論文が出ていて、特許もファーストで2本くらい出ていた。実験技術も問題なくて特に僕が感心しているのは試料合成の能力である。過去50年位されていなかった試料の合成もできている。これには大変驚いた。また彼は新しい単結晶試料の合成にも成功していてこれに関しては相当な可能性がありこれから10年間においてかなり研究が進むだろう。人物も私と一緒に研究している分には申し分なくコミュニケーションも英語で十分できる。私自身も彼の研究をサポートして論文をいくつか書いていきたい。これからたくさんの研究が彼から生まれてくるだろう。私も手伝いながら学んでいきたいと思う。

彼の推薦書を書きながら最近私にいろいろと就職の相談をしてきた人のことを思い出した。これらの若者は正直に言うと私が博士課程の学生だった自分に比べて肌感覚で3-5倍くらい優秀である。なので僕個人としてはどこの研究室でポスドクをしても素晴らしい仕事をするだろうし、彼らを欲しがる人々はいくらでもいるだろう。だからアメリカだろうがヨーロッパだろうが日本だろうが中国だろうが推薦書どこでも書くし、というよりかは僕自身が僕のネットワークを通してこの学生に興味がないか?空いているポジションはないか?聞いて回りたいくらいなものだ。実際もしこれらの地域にポスドクしてみたいなら僕自身が仕事を見つけてきてあげると言っているくらいだ。彼らとはこれからも研究を行っていきたいと思っている。ひとつの発見としては彼らのように相談してくれれば世界中どこにでも行けるチャンスというものはくれる人がいるということだ。もちろん彼らに能力があってのことだが、学生自身では見えなかったコネクションの壁は我々のような人間に相談するだけで解決することもあるのだと思った。若いからと遠慮せずにこういうキャリアへ進みたいといういうだけで道が開けることもあるのだ。

またもう一つ学んだことは教授からポスドクの推薦書どれでもそうだが書くことにより自分自身がかなり勉強になることが分かった。さらに驚いたのは彼らの仕事を真面目に評価することにより彼らをよりうまくサポートできるようになるということが分かった。推薦書を書きながら彼らはこういうことができるのかこういう研究をしてきたのかこういう技術があるのか?ということがわかると自分もこの研究のサポートをお願いできないか?また彼らの研究も僕がこういうサポートをすればうまく進むのではないか?とかみえてくるようになりよりよく研究協力体制ができてくるということだ。もともとその人の研究を知っている人の推薦書を書くわけだが、彼らの研究内容を真面目に評価できる機会があったことで協力の仕方が見えてきたということだ。これは意外な発見だった。実際、推薦書を書いた後で共同研究が始まったりどんどん進んでいったりしている。なので推薦書を書くのは相手のために書くものでもないのだとわかった。

これら二つのことは今回の学んだことでこれからも意識していきたい。私自身推薦書を書いてもらってきたからこそ今の自分があるわけで私が推薦書を書くことは大変光栄である。時間があろうがなかろうが推薦書を書くことを断ることはないだろう。大変勉強になるし書くことは楽しい。本当はもう少しエレガントな英語でかけたらよいのだろうけれども今の英語力で最大限できることはしてあげたい。これからもよく勉強してしっかり一本一本学びながら丁寧に書かせていたける機会が恵まれると大変幸いである。